2017年08月07日
アメリカの教育者であるDr. Patricia Fiorielloは「国際バカロレアのDPで学ぶ12のメリット」として公開しています。そこで、国際バカロレアのDPを習得した著名人と照らし合わせてみました。政治家から王室、女優から宇宙飛行士と幅広く活躍しています。「国際バカロレアとは」と思った方は一読してくださいね。
国内で国際バカロレアのDP(ディプロマ資格課程)に取り組もうとする国公私立、インターナショナルスクールがほぼ出揃いました。
アメリカのサンフランシスコを拠点に教育者であるDr. Patricia Fiorielloは、「国際バカロレアのDPで学ぶ12のメリット」を次のようにまとめています。
▼宇宙飛行士の星出 彰彦氏は、アメリカからの帰国生ですが、UWCの東南アジア・カレッジで国際バカロレアのDPを取得し、慶応大学理工学部を経て宇宙飛行士になっています。
国際バカロレア(IB)は、1968年に国際バカロレア機構(IBO)によって設立された教育プログラムです。
国際バカロレアのカリキュラムは、初等教育プログラムのPYP,中等教育プログラムのMYP,ディプロマ資格プログラムのDP、職業訓練のCPがあります。
現在、約140カ国以上、50万人以上の生徒が国際バカロレアで学んでいます。
PYPは、初等教育プログラムのため3歳から11歳までが学べる。MYPは、中等教育プログラムのため11歳から16歳までが学べ、ディプロマ資格プログラムのDPは、16歳から19歳を対象としている。
国際バカロレアというと、一般的には、高校2年、3年生相当で学ぶ国際バカロレアのDP(ディプロマ資格プログラム)が大学志願に使われるためよく知られています。
▼ディプロマ資格プログラムについては、『3分で知ろう!国際バカロレア』の記事を参考にしてください。
国際バカロレア(International Baccalaureate)とは、世界中を転勤する家庭の子どもが、大学に進学できるように国際的に認められる大学志願資格を作ろう!という動きから生まれました。
国際バカロレア教育の特徴は、国際バカロレアが目指す探究者像を目指すところにあります。
すなわち人格を含め、国際バカロレアの教育理念に沿った「人」に育てます。
そのため、国際バカロレア教育を受けさせたい、と考えたお子さんと家庭は、まずは国際バカロレアがどのような「人」として育てるのか?を学ぶことから始めます。
国際バカロレア認定校の多くが、保護者向けのワークショップを開催するのは、国際バカロレアが育てたいと考えている「人」と家庭が「我が子にこのような人になってほしい」という方向性を再認識するため。
ここが従来の「お任せ教育」とは大きく異なる点です。
国際バカロレアの教育理念をまずは一読しておきましょう。
難しいそうですが、保護者としては、全体の方向性をつかむことが重要です。
国際バカロレア(IB)は、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。
この目的のため、IBは、学校や政府、国際機関と協力しながら、チャレンジに満ちた国際教育プログラムと厳格な評価の仕組みの開発に取り組んでいます。
IBのプログラムは、世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけています。
出典:文部科学省 国際バカロレアの理念
▼イギリスのロンドンにある King Fahad Academyでヴィジュアル・アーツの授業を受ける国際バカロレアのDPの生徒たち。 国際バカロレア機構のインスタグラムより引用。
DPで学んだ生徒は、大学やカレッジに受け入れられる比率が他のカリキュラムで学んだ生徒より高くなっています。
少し古いデータですが、国際バカロレア機構の情報によるとアメリカの大学の合格者を分析すると国際バカロレアで学んだ生徒の方が合格率が高いと出ています。
アメリカの東海岸にあるIVYリーグの大学よりも、西海岸の大学(スタンフォード、UCLA、UCバークレー)などの方がDP修了者の合格率が高い傾向があることがわかっています。
アメリカの大学は、学費が高騰しており、学生ローンの残高が145兆円を超えたことも話題になりました。
その中で、DP修了生は課外活動も積極的に活動しているため、学業以外にも問題意識を持っています。
そのため奨学金やインターンなどのチャンスが増えると考えられます。
ちなみにDPの科目、成績によっては大学の教養課程の単位認定が免除され、学費が少なくて済みます。
DPで学ぶ生徒は、探究的に学ぶため科目を横断して学びます。
テーマによって学際的に取り組むため、科学と歴史、アートと数学など様々な科目が含まれています。
学際的な学びの先に新しい分野や学問が発見されています。
▼インド出身のモデル・女優のソーナム・カプールは、シンガポールにあるUWCの東南アジア・カレッジで国際バカロレアのDPを取得しています。ファッション誌のVOGUEの表紙を飾るソーナム・カプール。
国際バカロレアの学び方は「探究的です」。すなわち「なぜ?」「どうして?」という疑問から掘り下げていく学びのため、その学び方を体得した修了生は、一生涯、自分らしく学び続けることになります。
国際バカロレアのカリキュラムで学ぶと生徒は、自立した聖心、新しいアイデア、戦略、表現力から、慣れない状況や不確実性に怯えるのではなく、どのように解決できるか、対処していくか、を学んでいきます。
その中で、自らの信念を守り通すことも学んでいきます。
その結果、自ら「挑戦する人」になります。
国際バカロレアの理念にある「国際的な視野をもつとはどういうことか」を自分が住む地域、国から世界的に結びつけて考えて行きます。
そのため、地域と国、国と地球が持つ概念や問題を探求的に解決するように具体的に考えていきます。
これにより生徒は、様々な分野(学際的)で、深い知識と(地域、国、世界)と理解することが身につきます。
▼中東のヨルダンで国際バカロレアのMYPで学ぶ生徒たち。国際バカロレア機構のインスタグラムより引用。
DPで学ぶ生徒は、自身の経験を理解し、また他人の考えや価値観、伝統を尊重します。
生徒は、自ら自信を持って相手の多様な考え方を受けとめ、評価し、そこで得られた経験からまた成長していきます。
DP修了生は、リベラルであるという点で、多文化主義のカナダのジャスティン・トルドー首相は典型的な例と言えます。
▼実は、元教師だったトルドー首相。国際バカロレアで学んだリベラリストのイケメン政治家です。
写真は、LGBTのパレードに参加するトルドー首相。
カナダの23代首相のジャスティン・トルドー。英語とフランス語が公用語のカナダで教師として教壇に立った後、政治の道に進みました。父ピエール・トルドーもカナダ首相を務め、「多文化主義」を進めました。
DPで学ぶ生徒は、誠実さと正直さを身につけていきます。
また、多様性ある他人や団体、更には地域のコミュニティのために公平な精神と尊敬の心を持ち合わせるよう育ちます。
DPで生徒は、社会奉仕活動が必須です。
これは、CAS(Creativity, Action, Service)と呼ばれていますが、地域の外国人住民のために災害時のマップを作って配布し、講習会を開いたり、カンボジアで学校を作ったりします。
その中で、利害で判断するだけではなく、社会に貢献する高潔なマインドを育みます。
▼オランダのウィレム=アレクサンダー国王は、UWCのウェールズにあるアトランティス・カレッジで国際バカロレアのDPを取得。ライデン大学で学び、オランダの航空会社でパイロットとして副操縦士をしていたことも話題になりました。
DPで学ぶ生徒は、毎日の課題やCAS活動を通じて、地域、国、世界の課題に対して、独創的で想像力豊かな課題解決能力と対応ができるようになります。
さらに自分の履修科目に関連した研究分野について課題論文(EE:Extended Essay)で、個人研究に取り組みます。
この中で、独創的な考え方と課題解決能力が盛り込まれた論文を作成します。
DPで学ぶ生徒は、ある特定の他人の理由や気持ちを理解するために、相手の状況に自分の身を置いて考えるようになります。
実際に「知の理論(TOK:Theory of Knowledge)」の授業の中で、知識の構築に関する問いを探求していきます。
「クリティカル・シンキング(批判的思考)」を身につけ、自分なのものの見方と他人との違いを自覚していきます。
▼オランダで国際バカロレアのMYPの試験を受ける生徒。国際バカロレア機構のインスタグラムより引用。
DPで学び、修了した生徒は、学習者としての様々な能力に自信を持ち、必要なときに挑戦するマインドを身につけます。
2年間を知識・メンタル・フィジカルと3つをフル回転させる国際バカロレアのDPは、探究的な学びのフルマラソンです。
このフルマラソンを学びきった生徒は、自分で探究的に学ぶことに自信を持ち、意欲的に社会で活躍していきます。
国際バカロレアの理念をまとめた「ラーナープロファイル」と呼ばれるものものがあります。
このラーナープロファイルは、どのIB校でも廊下や教室などいたるところに掲げられています。
生徒たちは、毎日、どのような「人」となるのか、「ラーナープロファイル」と向き合って自分を掘り下げていきます。
・Inquirers 探究する人
・Knowledgeable 知識のある人
・Thinkers 考える人
・Communicators コミュニケーションができる人
・Principled 信念のある人
・Open-minded 心を開く人
・Caring 思いやりのある人
・Risk-takers 挑戦する人
・Balanced バランスのとれた人
・Reflective 振り返りができる人
いかがだったでしょうか。
国際バカロレアのDPで学ぶとどのような「人」になるのか、著名人を取り上げながら振り返ってみました。
どちらかというと「国際バカロレアのDPで学ぶ12のメリット」というより、「目指すべき人格」に近いかもしれませんね。
お子さんが国際バカロレアのDPで学び、将来、どのような未来を切り開くのか。
楽しみですね。
本記事は、アメリカの教育者であるDr. Patricia Fiorielloは「国際バカロレアのDPで学ぶ12のメリット」を参考にしました。
詳しくは、こちらを参考にしてください。
http://drpfconsults.com/12-benefits-of-international-baccalaureate-diploma-program/
この記事の記者
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。
国際宇宙ステーションのロボットアームを操作した初めての日本人宇宙飛行士となりました。
では、12のメリットについてアメリカのDr. Patricia Fiorielloの説を読む前に、少しだけ国際バカロレアについて事前に知ってみましょう。