なぜ、インターナショナルスクールの授業料は高いのか?
■お子さんが生まれると一度は、インターナショナルスクールに通わせることを考えませんか?
実際、芸能人や著名人などお子さんをインターナショナルスクールに通わせている記事を目にしたかたも多いと思います。
また、ネットでインターナショナルスクールのホームページを見て、予想以上に高いインターナショナルスクールの学費に愕然とした方も多いのではないでしょうか。
そこで、インターナショナルスクールの授業料が高い理由をまとめてみました。
インターナショナルスクールの学費が高い要因
インターナショナルスクールの学費が高い要因としては、次の5つが挙げられます。
1、少人数制
2、教員のコスト
3、探究的なカリキュラム
4、多国籍な生徒の獲得
5、税制面での優遇や補助金
国内のインターナショナルスクールの授業料は、年間約200万前後。
インターナショナルスクールが教育機関として、安定で継続した教育を実施するためには、授業料収入と良い教員と施設をどのくらい高いレベルで安定的でかつ継続的に実施するか。
それが授業料に反映されているのです。
良い教育=すなわち多様な生徒構成に対する少人数制教育、優秀な教員と教育理念に合わせたカリキュラムなどインターナショナルスクールの教育に必要な要素です。
特に少人数制で探究的なカリキュラムは、インターナショナルスクールの教育の本質です。
多くのインターナショナルスクールでは、学年や科目にもよりますが、一クラスを約18名から25名前後に設定しています。
これはあくまでも定員ですから、学年や科目によっては、さらに少数のグループに分けて学ばせていると考えられます。
世界経済とインターナショナルスクールの授業料
インターナショナルスクールは、海外転勤族の子弟の教育機関であるため、世界経済の影響を受けやすい教育機関です。
インターナショナルスクールの授業料と運営費用を分析した結果、約20年に一度の世界的経済危機や自然災害などのリスクに対応するための財政基盤が学校には必要です。
例えば、1990年のバブル崩壊、2008年リーマンショック、2011年東日本大震災が挙げられます。
(その間に1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア通貨危機なども含みます)
特に世界的な経済危機は、世界から生徒が集まるインターナショナルスクールを直撃します。
また、災害の多い日本では、地震などが起きると海外からの駐在員は、自国に戻ります。
そのため、突発的な状況下でも、生徒の3分の1以上がいなくなっても持ちこたえる財務基盤が必要です。
少人数制
少人数制の理由は、多国籍な生徒構成とリンクしてきます。
世界中から集まってくる転勤族の生徒が同じ学力・同じ理解度ということはありえないからです。
世界的な転勤族は、例えばイタリアから日本に来た生徒のケースでは、教授言語が変わるとともに、生徒の学力も違います。
世界中から集まった生徒を一定のレベルまたはそれ以上に引き上げるには、通常の授業以外に習熟度別の授業、グループ別、取り出し授業、さらに放課後のチューターなどさまざまな手法を使います
また、インターナショナルスクールのカリキュラムで代表的な国際バカロレアのような探究的な学びは、自分で考え、答えを導き出すため、知識暗記型な勉強では答えが出せません。
暗記型の答えが求められていないからです。
世界中から生徒が入学してくるインターナショナルスクール
インターナショナルスクールの構成要素である生徒構成ですが、世界中から来る生徒を想定しています。
世界中を対象として生徒募集をしているため、生徒が安定して志願してこないことがあります。
駐在員も香港、シンガポール、バンコクに集まり、東京や大阪など日本を希望しないケースも増えています。
外資系企業の動きを睨みながら、学校側は定員割れの状況も想定し、運営します。
また、一年間を通して国際移動性の高い生徒のために席を確保していることもあります。
すなわち、学校の創設理由などから、特定の国や文化圏の生徒向けの席を意識的に確保しているのです。
また教育業界としては珍しく、世界経済の影響が最も早く反映されます。
2008年のリーマンショックは多くのインターナショナルスクールに打撃を与えました。
当時、国際転勤族の中心は、金融機関でした。
リーマンションで、金融機関系の駐在員の巻き戻しが起こり、インターナショナルスクールに大きく影響をあたえました。
過去の世界経済危機からも、インターナショナルスクールの運営側は良い教育(教員面・施設面)と実施するコストのバランスを取っています。
安定的に経営するには、「転勤族」ではなく、日本に永住している外国人子弟がキーポイントになります。
世界から良い教員を採用
インターナショナルスクールの教員は、世界中で活躍するため給料、その時の為替や住居費、渡航費など様々な点でオファー条件を整え、世界から優秀な教員を採用していきます。
インターナショナルスクール経営のジレンマ
良い教員が、学校の教育の質の保証するため、学校側としても教員へのオファー条件とコスト的な妥協点を見出すのが大変な作業です。
世界水準の教育が求められ、世界水準の教員の人件費と限られた授業料というジレンマに陥りながら運営を進めていきます。
運営側は数十年に何度かの世界的な経済危機を頭の隅で意識しながら、世界的な国際移動性の高い生徒の移動も予測します。
生徒の移動性を想定しながら空席を作り、逆に世界の経済危機や自然災害では定員割れが起こることも想定しながら運営をしてきます。
いわゆる守りの経営が必須になります。
そのため、世界経済が良くなってもすぐに教員や施設面で増強ができず、すぐに定員になるケースが多いのも特徴です。
世界経済の景気が影響するインターナショナルスクールの経営
学校側は、生徒の増減に対応しながら、学校施設や教員など一年度を通して保証します。
それに対し、プラスアルファの部分で年度内に出費が重なる部分では保護者の協力を募ります。
会計的にみると固定費が高く、変動費が生徒数によって大きく変わる仕組みです。
保護者も生徒の増減かかわらず教育の質を保つ学校側に対し、寄附をします。
日本のように少子化、アジア地域でのプレゼンス低下、さらに物価が下がるなかでインターナショナルスクールを運営するのは正直、かなり厳しいのが現状です。
海外転勤族のために設立された教育機関
インターナショナルスクールは、海外からの転勤族のために設立された教育機関。
そのため外国籍の生徒が通う学校のため、日本国民は少数です。
また日本国民は、教育の義務があります。
インターナショナルスクールに、日本国民が通っていないのであれば、税金を投入する必要もありません。
そのため国家や都道府県がインターナショナルスクールに補助金を支給する根拠が低いのです。
実際、インターナショナルスクールは、ほぼ補助金が出ていません。
また、外国籍の生徒が学ぶインターナショナルスクールは、英語で探究的に学ぶため、文部科学省の学習指導要領では学べないのです。
国民が少なく、国の定めた教育を実施しない教育機関に税金を投入する根拠は低く、そのため補助金が少なくなり、日本の学校より授業料が高くなるのです。
もちろん、世界景気の影響を受け、探究的な少人数制の質の高い授業を実施すればするほどインターナショナルスクールの経営は必然的に厳しくなります。
しかし、日本の国際教育を動かす一条校の動きがあり、同時に特区を活用した国際教育が根付いてきました。
そのなかで一条校が運営するインターナショナルスクールが着実に増えています。
日本の学校が運営するインターナショナルスクール
日本の一条校が運営するインターナショナルスクールに注目が集まります。
千葉県幕張市にある幕張インターナショナルスクールや沖縄県うるま市にある沖縄アミークスインターナショナル幼稚園・小学校・中学校など特区を活用していますが、国際教育の変化の兆しです。
幕張インターナショナルスクール スクリーンショット
http://www.mis.ed.jp/index.html
近年では、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢のように一条校でありながら、外国人生徒と日本人が学ぶインターナショナルスクールが人気になっています。
インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢のスクリーンショット
https://isak.jp/jp/
歴史的には、一条校とインターナショナルスクールの融合を果たした関西学院千里国際中等部・高等部と大阪インターナショナルスクールのシェアード・プログラム(同じ校舎で学び、授業の乗り入れをしている)が新しい仕組みとして架け橋をつくりました。
関西学院千里国際中等部・高等部、関西学院大阪インターナショナルスクール スクリーンショット
http://www.senri.ed.jp
また、大学では、学生の約50%が留学生で構成され、企業の採用したい大学ランキングでも有名な立命館アジア太平洋大学。
大分県にあることを含め、まさにエポックメイキングでした。
日本人は、英語で学ぶとともに、留学生は日本語が必修です。
日本にある大学として、APUしかできない教育。それが、APUの特徴といえます。
立命館アジア太平洋大学 スクリーンショット
http://www.apu.ac.jp/home/
現在とこれから
日本の一条校が国際バカロレアに取り組み始めたました。
今後、国際バカロレアの認定校の増加を含め、日本の一条校による国際教育が進むと考えられます。
まさに国際教育の変換点にいるのかもしれません。
インターナショナルスクールタイムズの編集長として、執筆しながら国際教育評論家として、NHK、日本経済新聞やフジテレビ ホンマでっかTV、東洋経済、プレジデント、日本テレビ、TOKYO FMなど各メディアにコメント及びインタビューが掲載されています。
プリスクールの元経営者であり、都内の幼小中の教育課程のあるインターナショナルスクールの共同オーナーの一人です。
国際バカロレア候補校のインターナショナルスクールの共同オーナーのため国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了しています。